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タナトス

TVの謝罪会見などで、問い詰められた責任者が長時間黙り込むという場面を目にします。
普通に見ていると「都合が悪いから喋りたくないんだよね」という感想を持ってしまいますが、人間は心理的に追いつめられると「声を出す」という簡単なことすら出来なくなってしまうんですよ。

つい先日近親者が亡くなり、立場上僕が連絡して回ることになりました。
電話で一通りあいさつした後「実は~」と切り出した瞬間、口が固まり何も言えなくなってしまいました。
次に何を話すか頭の中では分かっているのに、どうしても言葉になりません。それどころか「えーっと」といった間投詞すら出てこない、もう完全に石になってしまいました。
声を出せるまで1分ぐらいかかったでしょうか。
口がきけなくなるという体験は生まれて初めてでした。

人間というのは「この言葉を発したら相手はどう感じるか」というのを瞬間的にシミュレートしているのだと思います。
そして、自分の主張が最大限に伝わるように、かつ相手の感情をなるべく害さないように、無意識のうちに言葉を変化させる習慣がついているのではないでしょうか。
漫画を読んでいて「フリーザ死んだよね」だったら、相手はむしろ話題に食いついてくる訳ですから、何の躊躇もなく「死んだ」と口に出せます。
これが身近な人物の訃報だと、相手に強いショックを与えてしまう訳ですから、たったの一言が言えないという状況が発生するのでしょう。

昔の偉い人は「口から出た言葉は相手の耳に届く。心から出た言葉は相手の心に届く」と言っています。
世の中で詐欺師とか嘘つきとか言われている人は、自分の発している言葉が「口先だけ」であり相手の耳に届いた後は泡になって消えてしまうという事を知っているのでしょう。
だからこそ詐欺師は驚くような嘘を平気でつけるのだろうと想像します。

今回の件で言葉には重みがあることを痛感しました。相手の心に届く言葉が言える大人になりたいです。

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金環日食5 その名はZ

日食の撤収を終えると午前9時半。飛行機の出発まで6時間ありますが、名古屋滞在はあと1時間が限度です。

とりあえずタクシーを捕まえ「名古屋城が見たい」と伝えて撮影スポットに案内してもらいました。
三カ所で停まってもらい、お堀や金のシャチホコなどを撮影。
そのままタクシーで名古屋駅まで。時間が無いとは言え、贅沢してしまいました。

近鉄線では三重県の「津」駅を通過。
ホームに平仮名で「つ」と書いてあるのはシュールです。
平仮名では日本最短の駅名ですが、ローマ字表記は”Tsu”となるため、鹿児島県の頴娃駅(えい/ei)、長崎県の小江駅(おえ/Oe)などが最短のようです。
しかし、「えい」「おえ」は二音節、「つ」は一音節だから、最短の称号は津駅にあげたいところ。
さらに調べると「津」はギネスブックには”Z”で登録されており、世界最短の駅名なんだとか。考えた人にはアイディア賞をあげたい。

駅はローマ字だと”eki”だから、英語の”Station”よりもはるかに短い。なんの利点もありませんが、”Z eki”は世界に誇れる最短「駅名」ですね。

近鉄名古屋-大阪難波(10:30-12:41)4650円、難波-関空(13:10-13:57)890円。

帰りのピーチも時間通りに到着。関空ー千歳(1535-17:30)
札幌市内は見事な夕焼けでした。
あの太陽が今朝は欠けていたのかと、思わず見入ってしまいました。
(日食編、おわり)

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金環日食4 決戦、第一新名古屋市

午前5時、目覚ましが鳴る前に目が覚めました。天候は晴れ。TVは日食のニュースばかり。これは期待できそう。
朝食を済ませていざ白川公園へ。

公園にはTVの中継車が陣取っており、アマチュア観測家もチラホラ見えます。
昨夜目星をつけた場所に観測機器を設置。準備万端です。
6:20に第1接触(日食開始)。公園には徐々に人が集まってきます。

このまま順調に観測できるかと思いきや、文字通り雲行きが怪しくなってきました。
全天の半分ほどが雲に覆われ、太陽が全く見えない。
雲の切れ間は見えているのですが、食までに晴天に戻るのか? 気が気ではありません。

金環5分前になっても太陽が見えず、これはもう無理かな? と諦めかけたところで、突然スパッと雲が消えてくれました。
第2接触(金環)になると一斉に「オオ~」という声。周り中が「見て見て」と声を掛け合ったり、ケータイで「見えるよ」と報告していたり、急にせわしなくなります。
金環2回目のベテラン(笑)の僕は、日食を撮るだけでなく会場風景も撮影。
何と言うか、日食という天文現象のみならず、日本中がたった一つの現象に注目している一体感も今回の見どころの一つでしょう。

2分間の金環が終わると蜘蛛の子を散らすように一般客が帰っていきます。
残っているのは明らかに元天文少年のオジサンたち(自分含む)。
同類の雰囲気を感じたのか、お互いに声をかけ合って機材紹介をしたり写真歴を披露し合ったり。
外人さんの団体からは「記念撮影するからウルトラマンの日食グラス貸して〜」と頼まれたりと、明らかに濃い空気の中で盛り上がりました。

FacebookやTwitterのアカウントを交換し合って解散。なんというか便利な時代になったものですね。
この中の何人かとは、2030年の北海道金環日食で会えるかもしれませんね。

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金環日食3 明日はどっちだ?

今回の日食では和歌山の宿を予約していました。金環の中心線に近い事と、南紀白浜空港の跡地で観測会が計画されていたからです。
しかし天気予報がどうも怪しい。月曜の和歌山は曇り予報で海岸線の近くほど悪天候になるんだとか。
京都は天気が良さそうですが、金環帯の端なので奇麗な同心円になりません。せっかく本州まで来たのだから少しでも良い条件で見たい!

昼過ぎには和歌山に向かう予定でしたが、午後2時の天気予報を待つ事にしました。
和歌山の曇り予報は変わらず。しかし、中部以東は晴天率が高いという予報です。
そんな訳で和歌山の宿はキャンセルして、急きょ名古屋市内に宿を取ったのでした。

関西から名古屋はすごく遠い印象がありました。実際は交通費2860円で2時間半というお手軽さ(普通列車)。
14:51三条京阪発、16:00米原乗換、16:40大垣乗換、17:13名古屋着です。
17:50にホテルにチェックイン。

さて、名古屋に到着したものの、僕はどこで日食を見たらいいのでしょう?
見知らぬ土地で周りはビルだらけ・・・
しかし「ありとあらゆることは、だいたいiPhoneがなんとかしてくれる」という言葉の通り、何とかなってしまうんですね~
Google mapsで付近を検索すると「名古屋市科学館」の前に大きな広場があります(白川公園)。早速訪れると、東側が開けている。
それでも、日食がどの方位に見えるか心配ですよね。
一昔前は「赤道儀」という特殊な三脚を使って、方位磁石や北極星の位置やらを駆使して、努力と根性で太陽の位置を算出する必要がありました。
しかし、21世紀の我々にはiPhoneアプリ「金環食2012」があります。
これはカメラとGPSと方位磁石と重力センサーを組み合わせたもので、カメラで撮影した景色に「日食当日の太陽の軌跡」を重ねて表示してくれるという優れもの。
このアプリを使えば誰でも簡単に太陽の位置がわかってしまいます。ビバ!21世紀。

三脚の設置に便利な場所に目星をつけてホテルに戻ったのでした。
明日は5時起き。早く寝ます。

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金環日食2 ピーチアビエーション

北海道は部分日食なので、金環を見るためには本州に行く必要があります。
渡りに船とでもいうか、今年の3月に格安航空会社「ピーチ・アビエーション」の千歳-関空便が就航しました。
ANAやJALだと往復約75000円のところ、ピーチだと往復18760円でした(2012年5月)、大手の4分の1とは驚き。

但し、ANAやJALでも早期購入割引を使えばピーチ並みの料金で乗れる場合もあります。
ピーチも料金体系が複雑で、もっと安い便や高い便もあります。
今回は話題のピーチに乗りたかったというのが一番の理由。

それとピーチは、搭乗口や手続きが他の航空会社と大きく違っています。
飛行機に乗り慣れている人ほど要注意です。

先ずは新千歳空港。
他の航空会社の受付は2階に集約されていますが、ピーチは到着ゲートのある1階が受付です。
千歳の1階は構造が複雑で、バスやJRで来た人はかなり迷うようです。
搭乗締め切りも少し早くて、出発30分前までにチェックインしないとキャンセル扱いです。ご注意を。
手荷物検査を終えた後は、他の航空会社とあまり変わりません。

千歳よりもハードルが高いのが関西空港。
飛行機を降りてバスに乗るのはまあいいとして、ピーチには「到着ゲート」がありません! これはビックリ。
「ずいぶん長いことバスに乗るんだな~」と思っていたら、いつのまにか制限区域を出てJR駅横に着いてしまいました。
手荷物は? と思っていると、別のバスから手作業で荷物が下されていきます。まるでバスツアーのように地面の上に荷物が高く積まれていました。
関空の設備使用料は高いから、これぐらいしないと格安は維持できないんですね。この思い切りの良さには感心しました。
それにしても、出迎える人が迷いそう。

更に、関空のピーチは出発便もハードル高いです。
関空は3棟のビルが並行して建てられていて、陸側から空港ビル、列車ビル、ホテル日航となっています。
普通の旅客はホテル日航の存在にすら気付かないのですが、ピーチは日航のビル内にあります!
つまり、JRを降りて陸側の空港ビルに行った人は「ピーチの受け付けがない!」と迷ってしまうのです。
トボトボと来た道を引き返して日航側に渡るときの敗北感と言ったらありません。

標識はちゃんと出ているのですが、人の目は見たいもの以外は見えないんですね~ 不思議です。
日航側はチェックイン機も手荷物検査も、PCやスキャナーがナマで見えていて手作り感満載。待合室や通路も入り組んでいて、いかにも「ホテルの遊休部を改造して作りました」という感じ。でもこれでいいんです。日本人は過剰にサービスを求めすぎです。

ピーチの飛行機は新規購入なので中はピカピカ。気持ちいいです。
しかしここにも経費削減の嵐が。
先ずは座席。通常なら3列2列で席を組むところが3列3列になっています。
次にトイレ。最前方の1か所にしか無いようです。キャビンアテンダントの準備室も削られていて、機内にはとにかく「座席」しか無い印象。このため、最前列から最後尾まで見晴らしがよい。

と、まあ色々ありましたがちゃんと案内を読んでいけばそれほど困ることはないでしょう。
千歳-関空間が最安で5000円代というのは大きな魅力です。
ピーチが日本の航空業界に良い意味での風穴を開けてくれると期待します。