3年ぶりの十勝岳登山。今年は大雪山系で山の事故が相次いだので、一人で山中泊というのはちょっと後ろめたい。まあ、天気もいいし、歩いたことある道ばかりなので勘弁して下さい。
登山に使えるのは土日のみ。金曜の夜は旭川に前泊しました。旭川は毎年のように来ているけど、駅前の「丸井今井」が閉店していて時代を感じます(札幌店は営業中)。
JRに乗って上富良野駅まで。バスの出発まで1時間近くあるので、近所のコンビニで水と行動食の追加を購入。バス停に戻ると、すでに10人ぐらいが並んでいます。さすがはトップシーズン。ただし、若者はいません(自分含)。
先頭に「自慢オヤジ」が陣取っていて、まわりの人たちにやたらと話しかけています。最初は「どちらまで?」「いいところですね」というフレンドリーな会話なんですが、だんだん人の話をきかなくなって「先週は羅臼に登った」「十勝岳に行きたいけれど、今日の飛行機で帰るから三段山だ」などなど、誰も聞いていないのに次々と山行歴を披露しています。
一人で山行していると人恋しくなってしまうんでしょうか、自分も気をつけないと。
上富良野からバスに揺られること約40分で「凌雲閣」に到着。軽く準備体操してトイレを済ませ、最後のメールを取ろうかと思ったら「圏外」でした。さすがはソフトバンク。
くじけずに10:20登山開始です。
富良野市内は晴れていたのに、山頂にはうっすらと雲がかかっています。安政火口に到着すると、上富良野岳も上ホロカメットクも見えません。硫黄の噴出孔が見たかったけど、なんとなく意気消沈したのでそのまま分岐へ向かいました。D尾根の分岐到着は11:00.普段は1時間かかるところが40分。荷物を軽くしたのが良かったのかも。
ここから富良野岳分岐までは2Km。道が細くて岩場が多いので、体力は削られないけど神経を使います。ただ、90分はかかるかと思っていたら1時間で分岐に到着。今日はホントに調子がいいなあ。
分岐に荷物を置いて富良野岳へ往復。雲はだんだんと薄くなってきて、10分ごとに晴れ間と曇りを繰り返します。
ここはお花畑で有名なところで、今が満開の様子。視界も開けているし、富良野岳はいかにも「北海道の山」という開放感にあふれています。技術的には初中級だし日帰りも可能なので、都合の付く方はぜひ行ってみてください。
富良野岳までは日帰りできる人気コース。分岐では大勢が昼食をとったり談笑したりと、なごやかな雰囲気。しかし、殆どの人は来た道を引き返してしまうので、三峰山方面はあまり人が通りません。皆と違う方向へ向かうのは、ちょっと気が引き締まります。
三峰山はその名の通り三つのピークが隣接した山。アップダウンが数百メートルごとに続きます。坂そのものは緩やかだし、ナキウサギも居たりして飽きることがありません。
しかし、前回はここでハンガーノックになってしまい、目の前の「坂」が「崖」のように見えたという苦い経験があったのです。
まず注意したのが水分補給。ポカリスエットを水で割って吸収しやすくしたものをペットボトルに注入。さらにブドウ糖を適時補給してエネルギー切れに備えます。まあ、そこまで意気込む山でもないんだけど・・・
その甲斐あってか3つの峰を難なくクリア。分岐から2時間で本日の目的地「上ホロカメットク避難小屋」に到着したのでした。
北海道の「小屋」は本州とかなり違います。本州では寝具が置いてあって食事も可能な「営業山小屋」が多いそうですが、北海道にそういう施設は殆どありません。
その代わりが「避難小屋」。電気も水道も来ていなくて、もちろん管理人さんも居ません。本来は「避難」するためのものですが、最初から「避難小屋に宿泊予定」の人が多いようです。是非は良く分かりません。
上ホロの小屋に泊まるのは3回目。前の2回は9月に来ているので、夜中は凍えるような寒さ。今回は8月だし、小屋には10人ほどいるので寒さの心配もなく、ぐっすりと寝られました。
翌朝、4時に起床すると見事な朝焼け。峰の西側はまだ夜で、東側は夜明けの雲海という奇跡のような美しさ。昨夜のベタ曇りが嘘のようでした。
朝食を軽く済ませて5時半出発。実は今回、ランタンもコンロも持ってきませんでした。LED灯は小さくて明るいし、一泊だからお湯も要らないかな、と。
最初はちょっと不安でしたが、荷物も軽くなるし、食事の用意も楽。1泊だけならこれもアリかもしれません。(真似しないでね)
十勝岳までは2Kmですが、歩きやすい道なので楽々。約50分で山頂着です。右の写真はいつものエイリアン人形。グリーンエイリアンとして十勝岳に登ったのは、たぶん彼が初めてでしょう。
旅行にエイリアン人形を持ち歩いているのは、言うまでもなく映画「アメリ」の真似。「アメリ」ではグノーム(小人)の置物が全世界を旅しています。エイリアンの旅行コレクションはこちらのGalleryからどうぞ。
十勝岳からの下りはまさしく「死の世界」です。ただでさえ森林限界の上なのに、たび重なる噴火の影響で植物が一本も生えていません。周りにあるのは石と岩のみ。地球上の景色とはとても思えません。
写真はグラウンド火口。直径が大きすぎて火口の全容が見えないほど。これは大正時代に噴火したもので、三浦綾子の小説「泥流地帯」で描かれている災害を引き起こしたものです。
なだらかな稜線が突然えぐられていて、一体どれだけのエネルギーが解放されたのか、想像もつきません。あたり一面にちらばる岩は、その時に爆裂したものなのでしょう。
荒涼とした世界を眺めていると、改めて「地球は生きている」と感じさせられます。
グランド火口を後にすると延々と下りが続きます。まあ下山だから下るのは当たり前なんですが、ここは景色の変化がなくて道もまっすぐ。このまま永遠に何処にも着かないんじゃないか? と思ってしまうほど単調でした。
終点の白銀荘に到着したのが午前9時。空には入道雲が出ていて、まさしく夏の景色。いい登山でした。
白銀荘の温泉に入ろうかと思ったら、入浴は午前10時からとの事。仕方ないので徒歩10分のところにある吹上温泉まで行ってみました。
ここはTVドラマ「北の国から’95 秘密」に登場し、田中邦衛と宮沢りえが入浴した事で一躍有名スポットになってしまいました。駐車場には車が10台以上。すごい人気です。
ただここは、混浴で脱衣所がないという、初心者にはハードルの高い場所。殆どの人は上から眺めて帰って行くようです。
ちゃんと入浴しているのはバイカーとか登山者とかの猛者ばかり。まあ、空いてて助かりました。
今回のルートはこちらのMapからどうぞ。
白銀荘前10:30のバスを待っていると、昨日ちょっとだけ話をした自転車旅行の人が居ました。
道内を1か月回っているという凄い人で、どうしても十勝岳に登りたくて白銀荘に泊まったんだとか。バスの中で話していると、これから美瑛の丘を回るという話でした。
今日は天気もいいし、登山は思いのほか順調で体力も余っていたので「丘巡りなら案内しましょうか?」と声を掛けると、「ぜひ」という返事でした。
次の電車までちょうど1時間。彼は自転車で移動、こちらはJRに乗れば、ちょうど美馬牛で落ち会える計算になります。美馬牛の駅前には「ガイドの山小屋」があって、レンタサイクルとかコインロッカーがあるので、荷物を預けて身軽に回れるという計画。
2時間ちょっとの軽いコースでしたが、絶景スポットに行くたびに感動してくれるので案内の甲斐があります。いつも富良野には一人で来て、ひたすら写真をとっているだけでしたが、人に喜んでもらえると嬉しいですね。
美馬牛の駅で別れを告げ、ようやく帰路につきます。広大な石狩平野にかかる夕日を眺めながら、次はどの山に登ろうかと夢は膨らむのでした。