2014自転車事故

事故現場自転車に乗っていたらクルマに当て逃げされてしまいました。

自転車や身体に目に見える傷はなかったのですが、医師の診断では全治10日間の打撲。
クルマの不注意が明らかな状況だったので簡単に決着するかと思ったら、相手が不思議な主張を繰り返すため長引いてしまいました。

自転車という乗り物は世間から本当に軽く見られています。
クルマ同士では決してやらないような無理な幅寄せや追い越しが、自転車相手だと日常的に起きています。
行政やマスコミは「自転車は車道」と叫ぶ前に、ドライバーの教育をしっかりしていただきたいものです。

事故状況

現場検証で撮った写真現場は歩道がある片側二車線、見通しの良い直線道路でした。
法律に従って道路左端を自転車で直進していたところ、ほぼ真後ろからヘッドライトで照らされました。横から追い抜かれることは慣れていますが、追突コースで迫られるのは恐怖です。
クルマに合図しようとしたところハンドサインが助手席ドアに接触しました。このことからもクルマがどれほど近かったか分かります。
接触時にはパコーンと大きな音が響きましたがクルマは減速せずに走り抜けていきました。
さすがに見逃せないので追跡。次の信号で追いついてナンバーを記録しました。

事故対応

ナンバーの記録だけで済ませたのは信号が青に変わる直前だったことと、相手が営業車だったからです。
ボディに大きく「Hガス株式会社」という社名と電話番号が書いてあるので、連絡がつかない事はないだろうと判断しました。
その日のうちに警察署に事故届け。Hガスは営業時間外だったので、明日以降に呼び出すという事でした。

示談

警察から「相手が接触を認めた」と連絡がありました。
Hガスに電話をかけると、ドライバーの上司の春田専務(仮称)が出てきました。
春田専務は最初からケンカ腰で「これは事故ではない」「こちらの事務所に来るなら警察を呼ぶ」と、まるでこちらが犯罪者のような権幕。こちらの発言をことごとく遮るので会話が成立しません・・・

後から聞いた話によるとドライバーは会社に「クルマと自転車は離れていた。自転車がクルマに接近して叩いた」と報告していたようです。
おそらく春田専務はドライバーの説明を鵜呑みにして「自転車が一方的に悪い」「無茶な要求に屈してはいけない」という間違った正義感をもってしまったのでしょう。
とはいえ、警察に接触を認めた状態で被害者に怒鳴り散らすのは、いくらなんでも良識が欠けています。
こちらからは「病院代の負担のみを求める」と話したのですが、そんな当たり前の要求すら「判断できない」そうです。
結局、保険を使うかどうかについて「明日以降に電話で連絡する」という話になりました。
主張に食い違い

「実際の現場状況」は実況見分調書に基づく。
「ドライバーの主張」は「クルマは右によけたが右タイヤは車線を超えていなかった。車線内を走っていた自転車との側方間隔は1m以上空いていた。接触の認識はなかったが音は聞こえた。当たったのなら自転車が寄せてきて叩いた」という発言に基づく。(現場状況からして、車が急にスリムにならない限り無理な説明です。「接触の認識はない」のに「自転車が叩いた」という説明も矛盾します)

弁護士

翌日の午後に春田専務から電話。相変わらずの怒鳴り声で、一方的に「弁護士に任せた」と話して切ってしまいました。
仮にも「専務」の役職にある人物がこんな子供じみた対応しかできないとは、Hガスの社員教育はどうなっているのでしょう?

続けて塩田弁護士(仮称)から電話で状況説明。数日後に「受任通知」が送付されてきました。
誠意を感じない文面
「賠償責任が生じないと考えている」という表現には敵意を感じますし、ドライバーの責任は「仮に」という弱い表現です。
状況がはっきりするまで待ってほしいという話ではなく、「治療費は払わない」という方針に軸足が置かれているように読めます。
文面は穏やかですが明らかに対立姿勢です。相手をねじ伏せてでも言うことを聞かせる、ぐらいの状況でなければ書いてはいけない文章だと思います。

しかし、ここまで強気に出られる状況かというと、どう見てもHガス側が不利です。
警察からは現場検証を行うことが双方に通知されているので、「人身事故である」「Hガス側が第1当事者である(事故の原因を作った)」「ドライバーは検察に書類送検される」ことがほぼ確定しています。
この状況で「示談不成立」「事故状況の主張に食い違い」となると、ドライバーに前科が付く可能性もでてきます。
普通に考えると弁護士は「前科がつくよりは示談で行きましょう」と穏やかな手段を薦める状況ではないでしょうか。明らかな対立姿勢を見せたことは悪手だと思います。

それとも、この状況で対立姿勢をみせてくるのは、弁護士が凄腕で「ドライバーの無責」に自信があるのでしょうか?
念のため塩田弁護士に状況を聞いたところ「物証も図面もない、写真も撮っていない。グーグルストリートビューで現場を想像した」という、何とも情けない回答でした。

経過

Hガスのように大きな会社が「有罪になっても構わない、相手が悪いはずだから徹底的に争う」という方針だとは考えにくいことです。
ドライバーと春田専務が話を上に通さず、本社の方針と異なる対応をしている可能性もあります。
書類送検される前に「示談しなくてよいのか? 前科が付く可能性があるが構わないのか?」と確認してあげるのが親切かもしれません。

そこで、Hガス本社の顧客窓口に連絡して状況を伝えました。
顧客窓口からの回答は「弁護士に任しているので判断は間違いない」との事。会社の方針として無責を主張するという事のようです。

ちなみに窓口の担当者も鼻息が荒くて、モラル的にどうなのかという話し方でした。
春田専務の説明を鵜呑みにしているらしくチクチクと嫌味を言ってくるのですが、発言の間違いを指摘すると途端に主張を変えて、また別の嫌味に移行するという無間地獄。
Hガスは、もうちょっとトラブル耐性のある人を窓口に置いたらいいと思います。

「事故でもないのに治療費とかw」→「人身で受理されて、実況見分も終わっています」
「診断書もないのに治療費とかw」→「診断書を警察に提出してます」
「示談の場で大声を出すとかw」→「怒鳴り続けていたのは春田専務です。こちらが声を荒げたのは「話を遮るな」の一回だけ」

そんな経緯なので穏やかな解決は無理そうです。

保険

Hガスを第1当事者とする事故証明書が発行されました。
Hガスは賠償責任を認めるしかない流れですが連絡がありません・・・

こちらから連絡するにも塩田弁護士は「待て」しか言わないし、春田専務は大声を張り上げるだけなので話が進みそうにありません。
そこで、加害者が加入している自賠責に連絡してみました。

自賠責の担当者によると「弁護士がドライバーの無責を主張している間は保険金の支払いはできない」とのこと。
こちらから「ドライバーの状況説明が現場検証と異なっていて、事故証明が出ていて、弁護士がネット地図を見ただけという状況で保険の支払い停止ができるのでしょうか?」と聞いたところ、確認して折り返すとの事でした。

数時間後、塩田弁護士から直接連絡が来ました。「これまでの主張を撤回して保険金を払う」という事でした。
あれだけゴネたのに、保険会社に言われたら行動が早いんですね・・・

弁護士事務所

保険会社が病院代を支払うのなら、Hガスや弁護士と話す必要はありません。
保険会社と私の間で書面を交わすだけです。
しかしHガスが「示談書を交わしたい」との事なので、わざわざ弁護士事務所まで出向いてみました。
これで解決と思ったら・・・
示談を開始する条件として「責任の所在を明らかにしてほしい」と伝えてありました。
今回の事故は状況が明白で、損害額も少ない。なぜここまで大事にならないと解決しなかったのか、その原因を知りたかったのです。

しかし塩田弁護士は「説明の準備はしていない、書面もない」とのこと。暗雲が立ち込めます。
書面で明示的に「責任がない」と書き、実際に「病院代を支払わない」という行動まで取ったのですから、全面撤回した理由ぐらいは聞かせてほしいのですが・・・

塩田弁護士の言葉づかいも穏やかではなく、まるで「悪いのはお前だが今回は見逃してやる」と言わんばかりの口調。上記文面とずいぶん異なる印象です。
2時間ばかりの話し合いは完全に平行線で、塩田弁護士は「判断できない。言えない、知らない、記憶にない」のオンパレード、そして暴言。
こんなザル仕事でお金がもらえる事に驚かされます。

「責任の所在を明らかにして欲しい」という要求に対しては「後日回答する」ということになりました。

示談不成立

塩田弁護士から書類が届きました。
内容は「示談書の取り交わしを求めません」「釈明を求められた事項につきましても〜回答いたしません」との事。

Hガスから「示談をしたいので足を運んで欲しい」とお願いしてきておきながら、責任の所在を追及したら「示談しません、経緯も説明しません」とは、呆れ返るばかり。

この後も何度か電話のやり取りがありましたが、塩田弁護士は提出すべき書類を放置したり、こちらに暴言を吐いたことを隠蔽していたりのザル仕事。
事故は自転車の責任が大きいと考えている」という捨て台詞まで頂きました。

Hガスが「事故は自転車が悪い」と勘違いしたまま決着するのは不本意ですが、弁護士が逃げモードなので時間を浪費するだけです。
警察の事故記録があるかぎりHガスが何を主張してもこちらの不利益はなさそう。この件はここで着地するのが得策でしょう。

着地点

この事故の着地点は下記の通り。

  1. ドライバーだけが書類送検された(自転車は無し)
  2. ドライバーは「自転車が寄せてきた」という主張を取り下げた
  3. Hガスは「ドライバー無責」と主張した根拠を示さなかった
  4. Hガスは示談を拒んだ
  5. 病院代は「被害者請求」とした(一般に、加害者に誠意や財力が無い場合の解決方法)

ドライバーの立場からみると下記の通り。せっかく弁護士を頼んだのに、法律的・金銭的・社会的に最悪の結果になったというところでしょうか。

  1. 責任を問われないと思っていたら書類送検された
  2. この件は解決できないまま放置状態
  3. 和解していないので自賠責は使えない(病院代はHガスの持ち出し)

責任の所在

今回の事件について、塩田弁護士の態度は初めからおかしなものでした。
おそらく彼は最初から「ドライバーが責任を認めざるをえない」というゴールが見えていたのでしょう。
勝てないと分かっている案件を「ドライバー無責の可能性がある」と甘い言葉で受任し、ドライバーが書類送検された時点で「警察の判断だから仕方ない」と手のひらを返すことまで織り込み済みだったのではないかと疑ってしまいます。

例えば、こちらが弁護士と最初に話した時「ドライバーの主張は道路状況に照らして物理的に無理がある」と指摘しました。しかし弁護士はその件を最後までドライバーに確認していません。もし確認して依頼人が「主張に矛盾があった、取り下げる」となったら困るから、あえて確認しなかったのではないでしょうか。

また、実況見分が行われる段階になっても和解を勧めなかったことも不審です。
後から聞いたところによると「書類送検されることを依頼人に知らせていなかった」とのことです。
なぜ知らせなかったのかと尋ねると「実況見分が書類送検につながるとは認識していなかった。ドライバーが事情聴取に呼ばれて初めて人身事故として処理されていることに気づいた」という説明です。
もし本当なら解任されてもおかしくないぐらいの不注意さです。
おそらくこの説明は嘘で「書類送検されるが不起訴で終わるだろう」という予断の下に、依頼を取り下げる可能性のある要件を隠していたと解釈できます。

他にも、現場の状況を「グーグルマップで見た、図面も写真も入手していない」というのは驚きでした。
クルマ対自転車の事故でクルマの無責を主張するというのは非常に難しい案件です。
保険会社に対して「グーグルマップで現場を見た」が通らないことぐらいはわかりそうなものです。

塩田弁護士に上記を尋ねたところ「十分な事実認識をできていなかった」という回答でした。
弁護士が自分の非を認めるというのは珍しいことのようです。
ましてや係争相手に認めるとは、よほど今回の仕事に後ろ暗いところがあるのでしょう。
一般市民が法律に疎いのをいいことに依頼人に泥を被せてでも依頼を取ってこようとしたのであれば許されない行為だと思います。

まとめ1

今回の事件が解決するまで、本当につらい日々でした。
事故態様が明らか、損害や要求が明確、警察や病院などの手続きもきちんと済ませてある。
この状況なら穏やかに解決するものだろうと予想していました。

まさか相手が大声で怒鳴り散らし、物理的に有りえない主張に固執し、問題点を指摘しても放置する。
それどころか「自転車が故意に起こした事故である」という逆ギレまで起こすとは想定外でした。
「治療費を払ってもらえない」までは我慢すれば済むことだとして、弁護士から「すでに払った治療費の返還を求める可能性がある」とまで言われたら恐怖しかありません。

社会的にはこちらの主張が全面的に通ったので安心ですが、感情的にはHガスと対立したまま「未解決」という嫌な終わり方です。

それにしてもHガスは何故、このような無茶な主張をしてきたのでしょう?
おそらく「交通事故」とは、それほどまでに受け入れがたい事象なのだろうと思います。
もし目の前にボタンが二つあって、赤を押せば100%の確率で「社会的信頼の失墜」、青を押せば0.00001%の確率で「責任を問われない」となれば、誰でも「とりあえず青を押してみよう」となってしまうのでしょう。
交通事故は加害者も被害者も「起こしたら負け」です。

まとめ2

Hガスが会社ぐるみで悪質とまでは言いませんが、一部社員にはモラル教育が必要だと思います。
他人にあれだけ罵詈雑言を投げつけることができるというのは、人間としての良識が欠けています。
今回の件についてHガスは「ドライバーの無謀運転」「春田専務の暴言」「顧客窓口の調査能力の低さ」を反省材料としていただきたいものです。

まとめ3

今回の件では「弁護士」に対する社会的信頼の厚さを感じました。
Hガスは明らかに不利な状況なのに「弁護士の先生が言ったから」と自分で判断することを放棄していたようです。

しかし、弁護士というのは正義の味方ではありません。依頼人の味方です。
お金をもらえれば、どんな無茶な主張も「可能性はゼロではない」と通すことが仕事なのです。

さらに言えば、弁護士は依頼に成功しても失敗しても儲かる仕組みになっています。
依頼人が明らかに勝てないトラブルでも「可能性はあります、頑張ってみましょう」と引き受けてしまえば、着手金だけは確実に手に入ります。
ニュースになるような事件で「損害賠償1億円を求めて〜」ということがありますが、あれは依頼人が欲を出して高額請求しているわけではないようです。
請求が高額であるほど着手金が高くなるし、万が一勝訴した場合に成功報酬が上がるので、むやみに高い損害賠償をもとめる弁護士が一部に居るらしいとのこと。

もちろん世間には、信頼に値する弁護士が大多数なのだろうと思います。
もし弁護士が必要な事態になったら、バッジを無条件に信頼せず、人間として信頼に値するかを見極めることが大切です。

2014年10月21日