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そして沈黙

Image 1 いささか旧聞ですが、札幌市の自転車走行空間で死亡事故が起きたとの事。
被害者のご冥福をお祈りします。

事件が起きたのは2013年7月19日、札幌市中央区の自転車走行空間です。
60歳の男性が信号待ちで停止していたところ、後方から来た乗用車に轢かれたというもの。
この事件が特異なのは「停止中に後ろから轢かれた」「事故が自転車用レーンで起きた」という2点でしょう。

この自転車用レーンは昨年実験的に設置されたものです。
北1条通りの西4〜7丁目の4ブロックに渡って、路肩が青く塗られています。
現場を自転車で通ってみましたが、路上駐車の多さと、ランブルストリップ(細かい段差を連続的に設ける)と、無茶苦茶な誘導ラインの引き方で「とても走れたものではない。真面目に走ると死ぬ」と思いました

Fig.1今回の死亡事故が起きたのは、その中でも特に危険だった西6丁目の地下駐車場出口。
ここを通る自転車は、前方の駐車場出口を避けるため、外側線をまたいで第1車線に出るというアクロバティックな動きを要求されます。後続の車から見たら「自転車何やってんだ!」と怒られて当然の挙動を強制されるのです。

車道に出た直後に、今度は路肩へ戻るラインが引かれています。
ところが、この導線は地下駐車場出口の導線と交差します(写真1)。駐車場を出るクルマから自転車はブラインドで見えないし(写真2)、クルマは右折気味で自転車は左折気味に交差する(写真3)という、事故を起こすために設計したとしか思えない無茶苦茶な構造になっています。

Image 2あまりにバカバカしいので、北海道開発局に設計意図を問い合わせました。
担当者曰く「自転車は路肩、第1車線どちらの走行も認められているのだから、レーンの構造は正しい」の一点張りです。
挙げ句の果てに「この場所が少し通り難い事は知っているが、そこを自転車がどう通るかも含めて社会実験と考えている」との発言です。
それは他人の命を危険に晒してまで実験する必要がある事でしょうか? そのように尋ねてみたのですが、まともな答えは返ってきませんでした。

Image 3そこへ来て今回の事故です。
停止線で停車中に追突されたのですから、自転車には何の非もありません。
クルマの不注意も責められるべきですが、そもそもこんな危険な構造を作った者も何らかの責任を問われるべきでしょう。

Image 4しかし、責任者である札幌開発建設部も、担当者であるらしい札幌都心部自転車対策連絡協議会も、現時点では何も声明を出していません。
「社会実験」を名乗る場所で事故が起きたのだから、構造上の欠陥がなかったのか、事故はどうして起きたのか、市民に知らせるのが義務です。
それを放棄した組織が作ったブルーレーンは殺人装置と呼ぶ他ありません。