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怒涛の春

今年はずいぶんと寒い日が続き、なかなか桜が咲きません。ようやく開花したのが5月13日。
例年より2週間近くの遅れでした。ちなみに、観測史上2番目に遅く、ここ30年で最遅だとか。

仕事帰りに桜の木を見て「週末は花見ができるかな」と観察していたのですが、今年はどうも様子が違います。
例年だと桜の花が一斉に咲き、花が散ってから葉が出てくるというパターンです。
今年は花が「そろそろ開くかな」という頃に葉も同時に伸びてきました。その結果、花が満開のときに葉も元気いっぱいで、ちょっと風情の足りない花見となってしまいました。
開花時期も短かったような気がします。

開花が遅いのは桜だけではありません。
梅も同じぐらい遅れて、ようやく開花宣言が出たのが5月19日。(北海道は桜の後に梅が咲くのです、念のため)
開花日に見に行ったのですが、ツボミがチラホラで花見にはちょっと早すぎました。
翌週は私用で花見にいけず、開花2週間の6月1日に見に行ったところ9分散りでした。なんだかタイミングが悪い。

ライラックの開花も遅れたので、今年は桜・梅・ライラックが同時期に見られるという、嬉しいのか勿体無いのか良く分からない花見になってしまいました。

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地図にない村

東急ハンズでレーザー彫刻を頼んでみました。
その名の通りレーザー光線を使って物体の表面に刻印してくれるサービス
刻印できるのはハンズで売ってる商品に限定されますが、木板、ステンレス、ガラス、iPhoneケースなど、対象は広い様です。

これで作ってもらったのは「部屋番号」。我が家では表札とは別に番号だけのプレートをドアに掲げているのです。(元ネタはイギリスのSF「プリズナーNo.6」)
今まではプリンタ出力を小さな額に入れて飾っていたのですが、数年経つと日焼けして読めなくなってしまいます。
まあ、プリント費用なんて微々たるものですが、折角だから永続性のあるものをと思ってレーザー彫刻を選んだ次第。

データはAdobeのイラストレーターでアウトライン化する必要があります。普通の人にはハードル高いのですが、画像処理が仕事だから難なくクリア。
ハンズで木材を選び、データと共に持ち込めば、一時間ほどで出来上がりです。
お値段は7×7cmの2480円。

自宅に戻り、背面にゴム磁石を貼り付けて出来上がり。ヤッター!
と思いきや、翌朝になると板が激しく反っていました。屋外に置いたので水分を吸って変形してしまったのでしょう。
水分が均等にしみ込めば平らになるはず、と放置する事1週間。なんとか元の平らな状態に戻ってくれました。

(おまけ)
写真はイギリスにある本物の「No.6」の表札です(2004年栗野撮影)。
40年以上も経った今でも、ロケ地となったホテル・ポートメイリオンには「プリズナーの村」を求めて訪れる人が絶えないのだとか。

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ミクミクにしてやんよ

今年も市民雪像を作ることになりました。西6丁目11番「Owl love」。名前の通りフクロウを作ります。
近くの方、ぜひお立ち寄りください。遠くの方、LCCだと安いですよ。

そんな訳で市民雪像の講習会に参加してきました。
実際に雪を削る前に粘土模型を作り安全性をチェックするという、主催者開催のお硬い集まり。
皆さんはもう忘れていると思いますが、昨年は「初音ミク事件」が起きまして、今年から雪像作りのレギュレーションが変更されることになってしまいました。

初音ミク事件とは、初音ミクの雪像が会期中に倒壊し、落ちた雪の塊で通行人一名が怪我をしたというもの。
滑って転ぶ人は毎年いるものの、雪像が直接事故の原因となったのは雪まつり史上初めて。しかも全世界的バーチャルアイドル初音ミクの「首」が転がり落ちたという話題性から、「日本では雪だるまが壊れたらニュースになるらしいぞ」など、面白おかしく報道されてしまいました。

これを受けて実行委員会もかなり苦労したようです。
これまで雪像の事前講習会は任意参加だったのに、今年から参加義務に変わってしまいました。
市民雪像も通路から離して設置するようです。
きちんと責任を認めて、原因究明→対策という流れは理解しますが、「市民雪像を厳しくするのは筋違い」というのが僕の意見です。

そもそも雪まつりりの雪像には、「大雪像」(自衛隊が作る10m越えのもの)、市民雪像(市民が思い思いに作る2m立方のもの)、国際雪像(海外から招待した専門家が作る3m立方のもの)、企業雪像(企業が宣伝のために作るもの、大きさは任意)など、様々な種類があります。
事故を起こした初音ミクは「企業雪像」であり、市民雪像とは異なるレギュレーションで作られています。(大きさ、文字の使用可否、デザインの制約など)

倒壊したミクは僕のグループの3つ隣だったので、制作過程は近くで見ていました。
大きい頭部の割に首が細く、特徴的なツインテールも再現しており、見るからに危うげなデザイン。
当初はレリーフのように削っていたので変だとは思いませんでしたが、何時の間にか中刳りされて足で自立する構造になっていました。
しかも、心棒も入っていなかったとの事。まあ、壊れてアタリマエです。

これが市民雪像だったら、設計段階で却下されていたと思うんですよね。
おそらく「造形のプロだから」「バランスも考えて」「凝結作業もする」という説明のもとに許可されたのでしょう。
結果として倒壊してしまったのだから、造形がどうのというより「レギュレーションは大事ですね」という話にしかならないと思います。

そして今年。蓋を開けると「市民雪像のレギュレーション強化」という話になっちゃってるんですよね。いくら何でもその理屈はおかしい。
どれぐらいおかしいかというと、F1でレースカーが事故を起こした事を理由に、日本の一般道の制限速度が厳しくなる、ぐらいの話なんですよ。

そのレギュレーションも、安全強化の為に意味がある内容なら受け入れます。
ところが、発表された変更は「台座の位置は変更せず、台座に乗った雪像を50cm後退させる」という不思議なもの。
雪像が転がり落ちるという事態に50cmのマージン増が有効とは思えません。
しかもこの変更で、雪像の背面のキャットウォークがなくなり、作るときに少し危険が増してしまったのです。
観光客の安全は大事だけど、作る人の事も考えようよ? という感じ。

まあ、これは誰が悪いという話ではなく、市民と実行委員会が意見を交換しながら落とし所を見つけて行くしかないのでしょうね。

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事実と真実

iPhone5の「パープル問題」が話題に上がっています。
カメラを強い光に向けた時、その周辺が紫色になってしまうというもの。手元のiPhone5でも簡単に再現しました。
ただ、フレアは条件が整えばどのカメラでも発生する物なので、取り立てて「不良品」という訳ではありません。

米Gizmode米Wired newsに取り上げられた事から一気に話題が広まりました。

気になるのが日本での報道のありかた。
まず、この問題は「フレア」であって「フリンジ」ではありません(詳細な説明はネットを見て下さい)。なのに何故か国内では「パープルフリンジ問題」という名称がまかり通っています。
専門外の人にはどうでもいい話だとは思いますが、「自動車」と「自転車」ぐらい違うので、間違った名称が流通している事に違和感を覚えます。

次に、パープル問題の原因が「赤外線カットフィルタを外したため」というのが定説になっている事。
手元のiPhone5で調べた所、赤外線カットフィルタは装着されています。これはテレビのリモコンを写せば簡単に確認できる事です。

大規模掲示板で「トラブルだ!」「回収だ!」と騒ぐ分には構わないと思いますが、WikipediaSlashdotのようなサイトまで事実を確認せずに「赤外カット〜」と書いてしまう人がいるのは、何だかなぁという気がします。

まあ、ウィキペディアは引用元を示して「そのような主張がある」という「事実」を集めるのが趣旨ですからね。
そこに書かれている事が「真実」だと思い込むのは、そもそもの使い方を間違えているとい事でしょう。

地味なケースですが、ネットを通じて明らかに間違った話が伝搬して行く様子は、ちょっと背筋が寒くなりました。

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ビルの町にガオー

所用で東京へ。東京都現代美術館で開催されている「特撮博物館」を見てきました。10月8日まで。

「新世紀エヴァンゲリオン」などで有名な庵野秀明が館長となり、廃れつつある特撮文化を集大成したという意欲的な展示会。
「ウルトラマン」「ゴジラ」などのメジャー作品から、「トリプルファイター」「突撃!ヒューマン」などの「何それ?」作品まで、これでもかというほど小道具が展示されています。
ウルトラマンは昭和41年作品ですが、小道具の完成度は現代の目で見てもまったく遜色ない。ブラウン管の向こうの世界はちゃんと作られていたんだなあと感心しました。

展示物の大半が「個人蔵」となっていて、こういう草の根の努力が文化を守るんだなと思います。しかし、昔は撮影が終わった小道具を個人が持って帰れたりしてたんですね、大らかな時代だ。

本展示の目玉は短編映画「巨神兵 東京に現る」です。
「巨神兵」は宮崎駿のアニメ映画「風の谷のナウシカ」に登場する人型最終兵器。これをトクサツの技術で動かして、ミニチュアの東京を焼き払うという凄まじいコラボです。

ものすごく期待していたのですが、実際に見てみると、うーん、イマイチ良さが分からない・・・
伊福部マーチに乗って「ビルの町にガオー」「なぎ倒せっ!」な1960年代ノリを期待していたら、冒頭から林原めぐみのモノローグという1990年代ノリです。「僕たちの日常が壊れていく」系の演出で、世界観に入り込みにくかった。
押井守の映画ならこういう演出もアリなんだろうけど、9分の短編映画でこの方向性はどうなのかなあ。

技術的には腰を抜かすほど素晴らしくて、「これはCG・・・だよね?」と思った箇所が「発泡スチロールでした」「絵具を垂らしてます」だったのは驚き。
昭和中期から受け継がれた「トクサツ」の正しい進化形にして最高峰だと思います。

ちょっと気になったのが場内のレイアウト。
狭い空間を上手く蛇行させているとは思うのですが、所どころ雪隠詰めになっていてどう回ったら良いのか不明な箇所も。
短編ビデオ上映ブースはすぐに人が詰まってしまって歩きにくい。例えば、行列のできる展示(オプチカル合成の説明とか、模型撮影ブース)で行列に並びながらビデオ上映が見れたらいいのに。
全体的に「もーちょっと動線を考えてほしいなあ」という印象でした。

あれこれ書いたけど、昭和のSF少年はぜひ見に行ってください。「科学技術が築く明るい未来」を無条件に信じていたあの頃に戻れます。
ザッと見ただけなのに3時間経過していました。